イベルメクチンは新型コロナウイルスに対する希望の薬となるか?【論文紹介】

イベルメクチンは新型コロナウイルスに対する希望の薬となるか?【論文紹介】

 イベルメクチン(Ivermectin)といえば、2015年のノーベル医学生理学賞を受賞した大村智氏が土壌の微生物から分離した物質からできた薬剤であり、糞線虫やヒゼンダニなどの寄生虫に作用して治療薬として使用されます。イベルメクチンは無脊椎動物の神経や筋肉の細胞において重要なシグナルを伝達する塩化物イオン(Clー)の通り道である”Clチャネル”に結合します。これによって神経や筋肉の細胞が麻痺をおこし、寄生虫は死に至ります。

イベルメクチン(wikipediaより)

 そんなイベルメクチンが、世界中で大流行している新型コロナウイルスに治療薬として効果があるかもしれないということで、SNSなどで話題になりました。今回はその研究を誰にでもわかるように紹介したいと思います。

 今回この研究を報告したのは、オーストラリアのMonash Universityのグループ。このグループは以前にも、イベルメクチンが、細胞の「核」と呼ばれる部分にタンパク質を運搬する分子と結合することで、「核」へのタンパク質の移動を阻害する効果がある、ということを見出し、ウイルスの増殖を抑制することができるのではないか、ということを報告してきました。実際にエイズウイルスや、デングウイルスの増殖が低下することがわかり、デングウイルスについては臨床試験まで進んでいるようです。

 これらの過去の研究をもとにして、今回の研究では、サルの腎臓由来の培養細胞(培養細胞として実験で非常によく使用される細胞種)に新型コロナウイルスを感染させ、そこにイベルメクチンを加えることでウイルスが増殖するかどうかを検討しました。

 まずは培養細胞に一定量を加えて時間的経過を追いました。すると、イベルメクチン投与してから24時間後には新型コロナウイルスRNA量が99.8%減少することがわかりました。さらに、48時間後には5000分の1の量まで減少することがわかりました。(図1:縦軸がウイルスRNA量、横軸が日数)

図1

48時間後にウイルス量がもっとも減少することがわかったので、次にイベルメクチンの濃度による効果を検討しました。すると5uMの濃度でウイルス量が99.98%低下することがわかりました。また、このような濃度では細胞毒性は認められませんでした。(図2:縦軸がウイルスRNA量、横軸が濃度)

図2

このように、試験管レベルの実験ではありますが、イベルメクチンが比較的低濃度で新型コロナウイルスの増殖を抑制することが示されました。果たしてヒトの肺の細胞でも同様の効果が認められるのか、また、マウスなどの哺乳類を使った実験で治療効果が確認できるのか、など、まだ検討すべき課題がありますが、未だに特効薬が同定できていない状況で、一つの大きな希望になっていると思います。また、イベルメクチンが治療薬として有用かもしれないということ以上に、なぜウイルスの増殖を抑制できたのか、という機序や理由を明らかにしていくことによって、新型コロナウイルスといかにして戦うのかの大きな手がかりになると思います。

参考論文:The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro