新型コロナ、武漢の推定感染者数は7.5万人(1月25日時点)

新型コロナ、武漢の推定感染者数は7.5万人(1月25日時点)

中国本土から始まり、今や世界中で感染者が確認されている新型コロナウイルス(2019-nCoV)、感染者数は右肩上がりで増加しています。その裏には、より軽症の患者さんを検査にて確認できるようになってきたという背景があるでしょう。とはいえ、すべての人に対して検査を行うことはできず、中国本土でも実際の検査を行う基準が設けられています。そのため、無症状の感染者が存在していることを踏まえても、実際に「真の感染者の数」を求めることはできません。

しかし、実際の数は求められなくても、推定することはできるでしょう。
ということで、今回紹介する研究は、2019-nCoV集団感染者数に基づき、疾病規模と国内および世界の公衆衛生リスクをモデルを組み立てて予想したという研究です。論文は1月31日にLancetに発表されました。

中国の研究グループによる報告で、感染確定数は中国疾病管理予防センターの報告から取得しており、人口の流動性については、なんと毎月のフライト予約、中国本土の300都市のデータを用いてモデルを組み立てています。
数理モデルは感染症の研究で非常によく用いられる“SEIRモデル”というモデルが用いられています。

SEIRモデルとは感染症流行をシミュレーションするモデルで

・感染症に対して免疫を持たない者(Susceptible)
・感染症が潜伏期間中の者(Exposed)
・発症者(Infected)
・感染症から回復して免疫を獲得した者(Recovered)

から構成され、その頭文字をとってSEIRモデルと呼ばれています。
これを数式で表すとこのようになります。

βは感染率、lは潜伏期間、iは感染期間に対応しています。
試しに、β=0.00005, l=1, i=3として、S,E,I,Rの初期値を10000,0,10,0としてシミュレーションすると、以下のようになります。

このグラフをみてわかることは10000人の中に10人の感染者が最初に存在しただけで、6000人もの人が最終的に感染を経験したということです。

このようにSEIRモデルを用いると非常にシンプルに感染症の広がりをモデル化できます。今回の論文では、この数式に加えて、航空機による出入りの情報なども組み込まれています。

さて、数理モデル解析の結果ですが、今回の新型コロナウイルスの基本再生産数(1人の感染者から生じる二次感染者の平均値)は2.68であり、1月25日時点の武漢市では7万5815人が感染していたと推定されました。武漢市からの他の都市へのウイルスの移動は、重慶市461例、北京市113例、上海市98例、広州市111例、深セン市80例と推計されました。このように武漢市からウイルスの持ち込みがあった中国の他都市での集団感染は、武漢市から約1-2週間遅れて始まり、急激に拡大していると考えられています。他の感染症との基本再生指数の比較の表を以下に載せておきます。 

この表を見ると、SARSよりは少し弱くて、季節性インフルエンザより少し強い、といったところでしょうか。

日本では2月4日現在ですでに20例の感染が確認されていますが、推定感染者数はどのくらいになるのでしょうか。
武漢からの国際便の行き先トップ20のうちに日本の3空港が入っていたこともわかっていますので、現在特定されている以上に感染者はいると想定されます。とはいえ、最も有効な予防方法はインフルエンザ対策と同じです。引き続き手洗いはしっかり行っていきましょう。

他の新型コロナウイルスについての記事:

紹介した論文:Nowcasting and forecasting the potential domestic and international spread of the 2019-nCoV outbreak originating in Wuhan, China: a modelling study – The Lancet, January 31, 2020

ページトップの画像:2019-nCoV Global Cases by Johns Hopkins CSSE