新型コロナウイルス『致死率15%』は何が間違いなのか??

新型コロナウイルス『致死率15%』は何が間違いなのか??

中国・武漢で発生した新型コロナウイルス(2019-nCoV)は感染がますます拡大し、国内でも感染者は増え続け、今後もさらに増加することが予想されます。
そんな中、SNSを中心に『致死率15%』という噂が広まっています。参照先に英語論文もあるのだからどういうことだとパニックになった方も多かったと思いますが、結論から言うと、この論文を元に『致死率が15%』だと一般化するのは大変な間違いです。

『致死率15%』は論文で調査した患者の中での死亡率であって、現在世界中で感染している患者の死亡率ではありません。
今回は言及されている論文がどのような論文だったのか、紹介したいと思います。

中国湖北省武漢市の金銀潭医院などの新型コロナウイルス肺炎の指定医療機関の研究グループが、2020年1月2日までに2019-nCoV陽性が確定した入院患者41例の臨床所見をまとめた論文をLancetに発表しました。

41例のほとんどが男性(30例、73%)で、32%に糖尿病や、高血圧、心血管疾患の基礎疾患が認められました。年齢中央値は49歳で、66%の患者に生鮮市場(華南海鮮城)への曝露が確認されました。発症時の症状は熱(98%)、咳(76%)、筋肉痛または倦怠感(44%)が多く、一部では痰、頭痛、喀血および下痢の症状を認めました。全41例に肺炎を認めました。合併症として急性呼吸窮迫症候群(29%)、RNA血症(15%)、急性心障害(12%)が認められました。入院患者のうち13例(32%)がICUに入室し、そのうち6例(15%)が死亡しました。

『致死率15%』の情報源である表

この、入院となった41例のうち13例がICUに入室し、そのうち6例が死亡したことから「致死率15%」という計算がなされたわけです。つまり、入院となった41例に限った解析であり、すべての感染者を対象にして求めた数値ではないのです。分母が重症者を主体とする研究報告であるという点に注意が必要なのです。
よって、この論文をもって、新型コロナウイルスの致死率は15%だと一般化するのは誤りです。このような科学論文の限界を”limitation”と呼んでおり、今回の論文でもしっかりと言及されています。

なお、正確な致死率はある程度大きなデータが集まらないと残念ながらわかりません。WHOの見解では致死率は3%程度と見積もっているようですね。参考のため、SARSなどの死亡率と比較した表を載せておきます。SARSの致死率は9.5%、MERSでは34.4%となっていることがわかります。今回の2019-nCoVはまだ “Unknown” ですね。

 N Engl J Med. 2020;10.1056 より

今回のような状況では、周囲の不安を煽るような内容が拡散されやすく、論文が参照元にあると尚更信じてしまいがちですが、『論文の過度な一般化』は今回に限らずよくある間違いです。その論文がどのような内容の論文なのか、できるだけ自分で調べてみるとをおすすめします。

参考文献:

Lancet.2020;S0140-6736(20)30183-5.

N Engl J Med. 2020;10.1056