『絆のペダル』肝移植について

『絆のペダル』肝移植について
2019年の24時間テレビで、相葉雅紀さん主演のドラマスペシャル『絆のペダル』でテーマとなっている、肝移植について概説したいと思います。
 
 
・肝移植とは
末期肝疾患に対する唯一の根治的治療として確立してきたものです。
1989年に島根医大の永末直文先生が日本で始めての生体肝移植を実施された。
1993年に当時信州大学の幕内雅敏先生が成人レシピエントへの生体肝移植を世界で初めて成功。
2010年の改正臓器移植法施行後から、 これまでできなかった、親族優先提供、家族の承諾による臓器提供、15歳未満の脳死後の臓器提供が可能になりました。脳死肝移植数が徐々に増加してきているとはいえ、日本での脳死下臓器提供数は年間50例前後で推移しており、肝移植が必要な末期肝疾患症例に対する治療としては、未だ生体肝移植に頼らざるを得ないのが現状です。
 
 
・適応疾患
非代償性肝硬変(B型肝硬変、C型肝硬変、アルコール性肝硬変、自己免疫性肝硬変)
悪性腫瘍(肝臓癌、類洞皮血管内皮細胞腫、肝芽腫)
進行性胆汁うっ滞症(原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎)
劇症肝炎(ウイルス性、自己免疫性、薬剤性など)
胆道閉鎖症、アラジール症候群
先天性代謝性肝疾患(ウイルソン病、α1アンチトリプシン欠損症、ヘモクロマトーシス、シュウ酸血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、糖原病)
その他(家族性アミロイド多発性神経症、多発性嚢胞肝、カロリ病)
 
※肝臓癌の適応はミラノ基準に基づきます。
 
 
・生体部分肝移植
健常人(ドナー)の肝臓の一部を手術で切除し、患者(レシピエント)へ移植します。
 
・脳死肝移植
脳死状態の方(ドナー)の肝臓の一部またはすべてを患者(レシピエント)へ移植します。
 
 
【レシピエントの条件】
1)原則65歳以下
2)本人が自己管理可能か、家族の協力が得られるか
3)進行性肝疾患の末期状態で予後が悪い状態
4)肝不全まで至らないが、静脈瘤からの出血を頻回に認めるもの
5)通常の肝機能検査は正常でも、移植により病態改善が見込めるもの
6)肝臓外の悪性疾患がないこと
7)重篤な他臓器障害を伴わないこと
8)アルコールや薬物依存がないこと
9)禁酒できること
 
【ドナーの条件】
1)自発的な臓器提供の意思があること
2)6親等以内の親族、3親等以内の姻族であること
3)20~60歳を原則とし、各種条件が非常に良い場合は65歳まで可能
4)肝機能障害がないこと
5)重篤な感染症や合併症がないこと
6)レシピエントに必要なグラフトサイズが得られる
7)解剖学的に不適当な問題がないこと
 
※血液型
ドナーとレシピエントの血液型が移植成績に影響します。
肝移植の場合は血液型不適合であっても可能ではありますが、移植成績は不良とされてきていますが、現在は様々な工夫により血液型適合移植に近い成績が得られることも多いです。
 
ドナー
レシピエント
 
A型
A型
一致
 
B型
不適合
 
O型
不適合
 
AB型
適合
B型
A型
不適合
 
B型
一致
 
O型
不適合
 
AB型
適合
O型
A型
適合
 
B型
適合
 
O型
一致
 
AB型
適合
AB型
A型
不適合
 
B型
不適合
 
O型
不適合
 
AB型
一致
 
・合併症
ドナー手術合併症
ドナーは元来完全なる健康体であり、患者ではないことを大前提に、外科医は手術および術後管理には一層注意を払っています。
合併症としては通常の肝切除と同様、出血、胆汁瘻、腹腔内膿瘍などがありますが、健全であることから合併症頻度はより低いです。
 
レシピエント手術合併症
移植は大手術であり、多くのリスクがあります。
拒絶反応、感染症、血栓症から始まり、その他も様々な合併症があります。これらは術後早期から、数ヶ月以上たって生じるものもあります。
拒絶反応の対策として、レシピエントはすべて、プログラフまたは、シクロスポリン、ステロイド、セルセプトなどの免疫抑制剤を内服します。これらの免疫抑制剤は最終的にもプログラフは永久的に内服をする必要があります。
 
 
・費用
生体肝移植の場合は、ドナー費用はレシピエントに請求する仕組みとなっており、術前のドナー検査から術後退院までがドナーの医療費となります。
保険適用の3割負担の場合は、入院期間などでかなり前後しますが、約500万円程度となります。
 
 
移植が唯一の治療となるような疾患を持つ患者さんはたくさんおり、臓器提供の順番待ちが続いていたりする状況です。
生体肝移植は、健康な人にメスを入れるという、外科医としてもかなり特殊な状況となる特別な手術ですし、健康なまま退院していただくことが大原則です。
制度などの点も含めて移植医療が世界から遅れをとっている日本ですが、これからも率先した環境整備をしていく必要があると思います。