エボラウイルス感染症とは何か?

エボラウイルス感染症とは何か?

エボラウイルスとは?

2019年8月4日現在、コンゴから帰国の70代女性がエボラ感染の可能性で検査を受けているというニュースが入りました。 (→(後日更新)検査は陰性でしたね!良かったです!)

ここではエボラウイルス感染症についての正しい知識をまとめます。

エボラウイルスは致死率の高い急性の熱性疾患を引き起こすウイルスです。
突発性の頭痛、筋肉痛、発熱にはじまり、続いて衰弱、皮疹、ショック、出血に至る多臓器障害を特徴とします。
流行は、自然界の未同定の宿主、コウモリの関与などが考えられています。感染にはおそらく感染患者の血液や汗、体液、排泄物に直接触れることが必要であると考えられています。唾液中にウイルスが検出されるケースもあることから飛沫感染を起こす可能性はありますが、現在までヒトによる空気感染の明らかな証拠はありません。

エボラウイルスはフィロウイルス科に属するマールブルグウイルス属とエボラウイルス属のうちの1つです。エボラウイルスには最初にウイルスが分離された地名に基づいて命名された5つの種:ザイール、スーダン、コートジボワール、ブンティブギョ、レストンがあります。レストンエボラウイルスを除いて、フィロウイルス科のウイルスはすべてアフリカに起源をもち、われわれ人間に重篤かつ致死的な疾患を引き起こします。

ウイルスの種類によりそれぞれ死亡率が異なり、特にザイールエボラウイルスによる重篤な疾患であり、死亡率は60~90%といわれています。また、スーダンエボラウイルスによる感染症の死亡率は約50%、ブンディブギョエボラウイルスは約35%の死亡率と報告されています。

通常フィロウイルスは熱(60℃ 30分)および酸で不活化されますが、血液中では室温で数週間生存します。
ウイルス粒子の表面のスパイクを形成する表面糖蛋白には、多くの高原決定基を共有するより小さい糖蛋白が、ウイルスに感染した培養細胞から産生されており、患者の体液中などにも分布します。この糖蛋白がウイルスに対する免疫応答を抑制したり、抗ウイルス活性を妨害したりしていると示唆されています。

このような高い致死率などから、マールブルグウイルスとエボラウイルスはバイオセーフティーレベル4の病原体に分類されています。

エボラウイルスに感染したときの症状は?

典型的には5~7日(最短2日、最長21日)の潜伏期間の後、患者は突発性に発熱、激しい頭痛、倦怠感、筋肉痛、悪心、嘔吐を呈します。2014年西アフリカでのアウトブレイ クでの調査では潜伏期間は過去の報告よりやや長く中央値は約11日と報告されています。通常発熱は遷延し、ついで下痢や胸痛、衰弱、精神障害を生じます。皮膚の色の薄い患者では、5-7日目に斑状丘疹性皮疹が現れた後、落屑を生じます。出血はこの時期に起こり始め、粘膜では部位を問わず顕著で、皮膚でも見られるようになります。
流行によっては、明らかな出血が見られるのは患者の半数以下で、ときには致死的な症例でも出血が認められない場合があります。

検査所見で特徴的なものは?

白血球の減少は感染初期に、好中球の増加は感染後期に認められます。血小板数は減少して5万未満になることがあります。
臨床検査上DICの徴候が認められますが、その際の治療についての統一の見解はありません。
AST/ALTなどの上昇は次第に認められ、症例によっては黄疸が出現します。また膵炎を反映して血清アミラーゼが上昇する場合もあります。通常、蛋白尿が認められ、腎機能の低下はショックの度合いと関連していると考えられます。

診断はどうやってつける?

エボラウイルスやマールブルグウイルスに急性に感染した患者のほとんどは血液中に高濃度のウイルスが存在します。抗原検出のELISAは感度が高く、信頼できる診断手法です。また、リアルタイムPCRは隔離の必要性や地域におけるウイルスの伝搬を判断する上で非常に有用です。検体としては、血清、咽頭ぬぐい液、尿、ホルマリン固定された剖検組織、皮膚生検検体などを用いることができます。発症から3日未満の場合にはウイルス量がRT-PCR検査の検出感度以下であることがあるため、必要に応じて評価を繰り返す必要があるとされています。

診断の除外はできる?

エボラウイルス病患者に接触後21日以降経過していた場合は発症のリスクはないと考えれます。
発症後3-10日にRT-PCR検査でウイルスが検出されない場合はエボラウイルス感染症の可能性は非常に低いと予想されます。
マラリア、デング熱など他の渡航者発熱疾患の診断がついた場合はエボラウイルス病の可能性は大きく下がりますが、アフリカのマラリア流行地ではあまり症状のないままにマラリアに慢性感染している患者も多く、エボラウイルス病と診断を受けた患者のうち1割程度がマラリア検査でも陽性となっていたという報告があります。アメリカでもマラリア検査陽性となったケースがあるようです。

現時点での治療法は?

特異的な治療はありません。ワクチンは現在治験段階です。
発熱、吐き気、腹痛などの症状を訴える患者ではそれぞれの症状に合わせた対症治療を行います。
脱水、敗血症の治療に準じた積極的な輸液管理を行います。数リットルもの下痢や、水分の血管外漏出による血管内脱水を起こす場合があることから、必要な輸液量は、5~10 L/日程度となることもあります。
細菌感染やマラリア感染の合併が除外できない場合は必要に応じて、抗菌薬、抗マラリア薬を投与します。


参考文献:
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Harrison Internal Medicine