白い巨塔:財前が見落とした『血管内リンパ腫』とはどういう病気か?

白い巨塔:財前が見落とした『血管内リンパ腫』とはどういう病気か?

5月22日から5夜連続で放送中の岡田准一主演のドラマ「白い巨塔」
繰り返しリメイクされているドラマだけあって、注目を集めていますね。

さて第三夜では、教授戦に勝利して浪速大学医学部第一外科教授となった財前五郎(岡田准一)が手術を担当した佐々木庸平(柳葉敏郎)の容態が急変。
続く第四夜ではICUでの治療のかいなく佐々木が死亡。病理解剖の結果、血管内リンパ腫が原因で肝不全となり、血液凝固障害を起こしたため死亡したことが判明。

というシナリオになっています。

この『血管内リンパ腫』という病気、なかなか耳にすることはないと思います。
実際現場で働いている医師にとっても『血管内リンパ腫』は難しい疾患です。

何が難しいのか。それは、病気を発見するのがとても難しい疾患の1つなのです。

この血管内リンパ腫、どのような病気なのでしょうか。

血管内リンパ腫(血管内大細胞型B細胞リンパ腫)とはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の亜型であり、血管内選択的にリンパ腫細胞の増殖をきたす、稀な疾患です。
リンパ腫細胞が中〜大動静脈を除くあらゆる血管内、特に毛細血管内や後毛細血管小静脈内で腫瘤形成を伴わずに増殖します。
中高齢者に多く、男女比に差はありません。
腫瘤を形成しないため、診断困難である場合が少なくありません。診断には骨髄生検やランダム皮膚生検が有用とされています。

臨床症状では、B症状(発熱、体重の減少、盗汗)、貧血、血小板減少、骨髄、脾臓、肝臓への浸潤が多くみられます。血管内で腫瘤血栓を形成し、多彩な臓器障害をきたします。血球貪食像や神経学的異常、皮疹を認める場合もあります。一方でリンパ節腫大が認められることは少ないです。

わが国では、血球減少、肝脾腫や血球貪食症候群を主体とするアジア亜型が約60%を占めています。アジア亜型では、腫瘤形成を伴うことは稀で、血球減少や多臓器不全などが急激に進行する臨床経過を示します。

治療はアグレッシブリンパ腫としてリツキシマブ併用化学療法が行われ、リツキシマブ併用化学療法が正しく施行されれば、3年生存率は60%と報告されています。

検査の特徴としては

・骨髄浸潤や血球貪食により、貧血や血小板減少をきたす
LDH上昇、β2ミクログロブリン上昇、sIL-2Rの上昇が高確率で認められる。
CRP上昇、血清フェリチン上昇、低アルブミン血症も認められることが多い。
・M蛋白(主にIgMk)がみられることもある(14%)

などがあります。ドラマ中では、CRPが高いという点や肝障害が認められる点が懸念されていましたね。

病変部位が明らかな場合はその部位の生検を行って診断をつけますが、病変部位が明らかでない場合に、ランダムに皮膚生検を行って、リンパ腫細胞を発見する方法があります。中には、骨髄検査やランダム皮膚生検を行っても診断にいたらない症例もあり、かなり手強い疾患です。

また、ドラマ中でも少し登場していましたが、PET検査を行うことで病変位置、広がりの把握や生検部位の選択を行うことができます。
骨髄生検とランダム皮膚生検を施行したが陰性であったが、その後PET検査にて肺野に病変があることがわかり、生検を行って診断できたという症例や、同じく骨髄生検とランダム皮膚生検が陰性であったが、PET検査を行って腎臓に病変があることがわかり、腎生検で診断に至った症例もあります。

こちら(下図)はPET検査で肺に血管内リンパ腫が存在していることがわかった症例です。通常のCT検査のみで血管内リンパ腫を診断したり疑ったりするのはなかなか難しいということがよくわかります。

 

J Gen Fam Med. 2017 Dec; 18(6): 477–478.


このように血管内リンパ腫は臨床上が極めて多様である上、CTなどでも見つからないケースもあり、血管内リンパ腫を疑って一歩進んだ検査をしなければ診断することができません。亡くなってから病理解剖で初めて血管内リンパ腫という診断がつくことも実際にあります。

私が過去に担当した難しい血管内リンパ腫の症例では、頭痛を主訴に病院に来院され、全く原因がわからなかったのですが、優秀な神経内科の先生が専門外にもかかわらず、やや特殊な血液検査を追加したことで血管内リンパ腫を疑うきっかけが生まれ、最終的には肝生検をおこなって血管内リンパ腫の診断にたどり着きました。

血管内リンパ腫は疑わないと見つけられない病気であり、見落とされている症例や発見が極めて遅くなってしまった症例は数多く存在すると思っています。

患者が血管内リンパ腫であったという設定は、かなりマニアックだなと思いました笑
財前が検査を怠ったのは間違いないことですが、このようなメジャーな医療ドラマを通して、こういった見つけるのが難しい疾患が実際に存在するということを、多くの方に知っていただければいいなと思いました。