子宮頸がんワクチンの有効性

子宮頸がんワクチンの有効性

1988~96年にスコットランドで生まれた女性を対象に、20歳時点の子宮頸部病変スクリーニング検査の結果を調べ、12~13歳時点でHPVワクチン定期接種を受けた1995~96年生まれの女性では、ワクチンの接種機会がなかった1988年生まれの女性に比べ、Grade3以上の子宮頸部上皮異形成が89%減少していました。

 スコットランドでは、2008年にHPV16型と18型を標的とする2価のHPVワクチンの定期接種が始まっており、2価のワクチンは2012年まで用いられました。対象者の85%超がワクチン接種を受けています。

 
 スコットランドでは、子宮頸癌スクリーニングの受診率70%を達成している。2016年6月5日までは20~60歳の女性を対象に、それ以降は25~64歳の女性を対象に、50歳までは3年に1度、それ以降は5年に1度スクリーニングを受ける仕組みのようです。

 細胞診の結果は、陰性、ボーダーライン、軽度核異常、中等度核異常、重度核異常のいずれかに、組織型は、正常、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)のうちの軽度異形成(CINグレード1)、中等度異形成(CINグレード2)、高度異形成/上皮内癌(CINグレード3)、癌に分類しています。

 細胞学的診断で、重度の核異常は1988年生まれの女性では0.75%(95%信頼区間0.63-0.89%)だったのに対し、1995~96年生まれの女性では0.06%(0.04-0.11%)でした。同様に中等度の核異常は、1988年生まれの女性では1.18%(1.04-1.36%)だったのに対し、1995~96年生まれの女性では0.27%(0.21-0.35%)でした。つまり定期接種を受けた女性では、ワクチン未接種女性に比べ、重度の核異常は92%(85-95%)減少し、中等度の核異常は77%(69-83%)減少しています。


 病理学的所見では、1988年生まれの女性ではCINグレード3以上の異形成が0.59%(0.48-0.71%)見つかっていたのに対し、1995~96年生まれの女性では0.06%(0.04-0.11%)でした。

定期接種を受けた女性では、ワクチン未接種女性に比べ、CINグレード3以上の異形成が89%(81-94%)減少しており、グレード2以上の病変の有病率はそれぞれ1.44%(1.28-1.63%)と0.17%(0.12-0.24%)で、88%(83-92%)の減少、グレード1の有病率は0.69%(0.58-0.63%)と0.15%(0.10-0.21%)で、79%(69-86%)減少しています。

 ワクチンの有効性は、接種時点の年齢が若い方がく、12~13歳時点で接種した女性では未接種女性に比べ、グレード3以上のCINの有病率が86%(75-92%)減少していたのに対し、17歳時点のキャッチアップ接種女性では、45%(17-64%)の減少に留まっております。

 これらの結果から著者らは、スコットランドで行われた12~13歳の女性に対する2価のHPVワクチンの定期接種は、子宮頸部病変の有病率を劇的に減らしており、接種を受けられなかった同じ年代の女性にも集団免疫効果が認められたと結論づけています。

 

BMJ 2019;365:l1161 Prevalence of cervical disease at age 20 after immunisation with bivalent HPV vaccine at age 12-13 in Scotland: retrospective population study

 

 

以下に現在の日本における子宮頸がんワクチンのについて概説します。

・日本で承認されているHPVワクチン

 国内で承認されているHPVワクチンは2価と4価の2種類があります。2価ワクチンは子宮頸がんの主要な原因となるHPV16型および18型に対するワクチンであり、一方4価ワクチンは16型・18型および尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型に対するものです。ワクチンはすでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は認められません。すなわち1次予防になるものです。したがって、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も有効です。初交前に接種するのが最も有効とされており、世界的には11~13歳での接種が推奨されています。

ただし、感染しているHPVが一度消失したあとの再感染を防ぐことは可能なため、初交前の接種に比べ有用性は減少するものの初交後と考えられる年齢の女性に対してもCatch up(追いかけ)接種が推奨されており、米国では26歳まで、オーストラリアでは45歳までの女性がワクチン使用の対象となっています。 

・HPVワクチンの効果

 HPVワクチン接種を国のプログラムとして早期に取り入れたオーストラリア・イギリス・米国・北欧などの国々では、HPV感染や前がん病変の発生が有意に低下していることが報告されています。これらの国々では、ワクチン接種世代と同じ世代のワクチンを接種していない人のHPV感染も低下しています(集団免疫効果)。
 国内においても複数の研究が進行中です。新潟県、大阪府での研究では、ワクチン接種者におけるHPV感染率の低下がすでに示されています。

・HPVワクチンの接種方法

2価ワクチンも4価ワクチンもともに各回0.5mlを3回肩の筋肉に筋肉注射します(2価ワクチン:初回接種、1ヶ月後と6ヶ月後に再接種、4価ワクチン:初回接種、2ヶ月後と6ヶ月後に再接種)。ワクチン接種により、自然感染で得られる抗体価の数十倍の中和抗体が産生され、最低7年間維持されます。

妊娠している方のHPVワクチン接種の注意点
・HPVワクチンは、それ自体はHPV感染のおそれはありませんが安全性に関するデータが不足しているため妊娠している方へのHPVワクチン接種は勧められません。最初のワクチン接種後に妊娠が判明したときは、以後のワクチン接種は分娩後にすべきとされています。なお、授乳中の女性はHPVワクチンの接種が可能とされています。

・HPVワクチンの費用

HPVワクチンは、各自治体でおもに中学生(12~16歳)の女子を対象に公費負担の制度が開始されていますが、成人女性には保険適応はなく、私費診療となります。3回打ち切っておおよそ5万円前後のようです。

・HPVワクチンの安全性

 WHOは世界中の最新データを継続的に解析し、HPVワクチンは極めて安全であるとの結論を発表しています。一方、HPVワクチンは筋肉注射であるため、注射部位の一時的な痛み・腫れなどの局所症状は約8割の方に生じます。また、若年女性で注射時の痛みや不安のために失神(迷走神経反射)を起こした事例が頻度は少ないですが報告されているため、接種直後は30分程度安静にすることも重要です。
 平成29年11月の厚生労働省専門部会において、慢性疼痛や運動障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されています。
 また平成28年12月に厚生労働省研究班(祖父江班)の全国疫学調査の結果が報告されました。これによると、HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12~18歳女子では10万人あたり20.4人)存在しました。

(HPVワクチン接種歴のない12歳~18歳の女子においても、「多様な症状」を呈する人が10万人あたり20.4人存在することが判明しました。)

・HPVワクチン接種後に「多様な症状」が現れた場合

 ワクチン接種後に何らかの症状が現れた方のための診療相談窓口が全国85施設(全ての都道府県)に設置されています。また平成27年8月には日本医師会・日本医学会より「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」が発刊され、接種医や地域の医療機関においての、問診・診察・治療を含む初期対応のポイントやリハビリテーションを含めた日常生活の支援、家族・学校との連携の重要性についても明記されました。

・接種後に重篤な症状がおきたときに、救済制度はあるのか

 HPVワクチンは平成25年4月に予防接種法に基づき定期接種化されました。現在、自治体から接種対象者に接種時期をお知らせしたり、個別に接種を奨めるような積極的勧奨は中断されていますが、定期接種としての位置づけに変化はなく公費助成による接種は可能です。万一接種後に重篤な有害事象が発生した場合は、予防接種法に基づく救済制度の申請は可能で、因果関係の審査の後、必要な補償が受けられる可能性があります。

 

厚生労働省のパンフレットも併せて読んでみてください。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/

 

 

現在は、日本においては積極的な接種推奨ができない状況となっていますが、産婦人科学会では、メリットを考慮して接種の積極的な勧奨ができるようにとしているようです。

私達医療者側は、患者に正しい情報とメリット、デメリットを説明できる能力が必要ですし、今回のデータでもわかるように、やはり接種を一人でもできるように今後も啓蒙活動含め進めていかないとと、産婦人科の医師ではない私も考えています。