小児期の体罰と反社会的行動

小児期の体罰と反社会的行動

子供に対する体罰、虐待… 
耳を塞ぎたくなるような子供の虐待死のニュースが最近多いです。

世界的に問題になっている小児の虐待ですが、日本でも虐待の件数は年々上昇傾向にあります。

 

※「オレンジリボン運動」公式サイトを参考に作成

さて、今回は、小児期の厳しい体罰や虐待を受けていたという経験が、成人してからの反社会的行動に多大な影響を与えていたという研究報告が、Journal of American Medical Association (JAMA)という医学界の有名雑誌に発表されていたので紹介しようと思います。

体罰を幼少期に受けたことのある子どもは、攻撃性が高く、成長して成人した後に反社会的行動を取ったり道徳的に振る舞えなかったりするという話がよく言われます。 

一方で、「反社会行動の原因は子供に十分な体罰を与えなかったことが原因だ」という意見がいまだに一部のメディアやサイト等で取り上げられています。
今回はその「虐待」と「成人後の反社会的行動」の関連性についての研究を紹介します。

 

今回紹介するのは、カナダにあるManitoba大学での研究。

小児期に

①厳しい体罰と虐待の両方
②厳しい体罰のみ
③虐待のみ

をそれぞれ経験したことのある方を調査し、成人後の反社会的行動に関係するかどうかを調べました。

対象者は18歳以上の米国の一般市民で、施設等に入所していなかった方からランダムに選び、これまでの厳しい体罰と虐待の経験を尋ねて集計しています。

 

ちなみにそれぞれの定義ですが、

虐待:
親または同居人からの、身体的虐待(叩かれて跡が残った、傷ができたなど)、性的虐待、情緒的虐待(言葉による暴力など)、身体的ネグレクト、情緒的ネグレクト、近親者間暴力への曝露

厳しい体罰:
親または同居人からの、突く、つかむ、押しつける、殴るといった行為

と定義しています。厳密には「厳しい体罰」と「身体的虐待」とは区別できなかったとのことでした。 虐待については当てはまれば頻度も尋ねています。厳しい体罰に関しては、「全くない・ほとんど無い・時々・しばしばあった・非常に頻繁にあった」の中から選択してもらい、「全くない」以外を選んだ対象者全員を体罰ありとしています。

 

反社会的行動については

1)社会のルールに従わず、違法行為を繰り返す
2)繰り返し嘘をつき、自分の利益や喜びのために人を操る
3)衝動的で計画性がない
4)暴力となって現れる興奮性と攻撃性がある
5)自己または他者の安全に対して無関心である
6)仕事が続かず、金銭的義務を果たさない

と定義されていました。

  

さて調査結果ですが、3万6千人以上を対象として調査し、年齢、人種、配偶者の有無、世帯収入、学歴などを統計学的に調節して検討したところ、
厳しい体罰と虐待の両方、あるいは片方の存在で、様々な反社会的行動の46.7%を、また、男性では反社会的行動の45.5%、女性では47.3%を説明することができるということがわかりました。

つまり、厳しい体罰と小児虐待は、成人後の反社会的行動と関係していることがわかりました。この研究によって確固たる証拠(=エビデンス)がさらに追加されました。

一刻も早く、全世界で子供対する虐待がなくなることを祈ります。

JAMA Netw Open. 2019 Jan 4;2(1):e187374.