虫垂炎(盲腸)になった妊婦さんへの治療は?

虫垂炎(盲腸)になった妊婦さんへの治療は?

皆さん、虫垂炎はご存知ですか?世間では、盲腸と言われている病気です。厳密には盲腸から飛び出るヒゲのようなものが虫垂で、そこの炎症なので虫垂炎といいます。
虫垂炎は、よく目にする緊急疾患であり、場合によっては手術が必要になったりもします。昔は疑わしきは全例手術!だったりする病院もたくさんあったようですが、今はある程度、治療のアルゴリズムも決まってきています。しかし、CT検査などの画像が普及してきた今でも、治療方針は非常に悩ましい病気であります。(詳しい治療選択の仕方については割愛しますが、悩んでいる方などいればなんでも聞いてください。)ただでさえ診断や治療に難渋することがある虫垂炎ですが、これが妊婦さんになるとさらに難易度は上がります。
その理由として、X線を使った画像検査を極力したくはないことや、妊娠で大きくなった子宮で、虫垂の位置が普通とずれてしまい、痛がる部位が変わること などからです。なので診断方法は症状、血液検査、超音波検査になりますが、超音波検査は診断の助け程度にはなりますが、達人などでなければなかなか診断することが難しいのが実際です。
もともと虫垂炎は教科書的にはまずは吐き気とみぞおちの痛みから始まり、右下に移動してくる というものですが、妊婦さんの場合は症状が様々です。

今回紹介するものは、虫垂炎の妊婦さんについて、結果的に手術を受けた216例に対して検討されました。そのうち164例(76%)が急性虫垂炎、14例(6.5%)が重症虫垂炎、38例(17.6%)が正常虫垂でした。来院時の超音波検査で診断できた例は125例/216例(58%)で、その後時間が経過してから再度超音波検査を行い診断できたものが19例/34例(56%)であったようです。残りの例は医師の経験に基づき、可及的に手術を行ったとのことです。
この検討では、虫垂炎の診断に迷いような曖昧な症例を、経過観察し、その後超音波検査を繰り返していく中で診断に至った例(つまりは症状が増悪していった例)に対して、そこから手術を行っても妊婦や児に影響はなかった とのことです。

外科的な感覚からすると当たり前の結果ですが、虫垂炎を疑ったとき、一番不安なのは赤ちゃんに影響はないかということがご両親の気持ちであることが多いです。つまり、すぐに治療してあげないと赤ちゃんになにか影響がでるのではないか と不安に思う方たちが実際にはかなりいます。十分に診断をつけてからでも手術に踏み切るのは遅くないですよ というのがこの論文の強みでしょうか。
私は妊婦さんの虫垂炎を疑ったときは、もちろん超音波検査を行いますが、診断に至る例は少ないです。血液検査による炎症反応チェックを連日行うこと、お腹の所見を見ることから始まり、血液検査の白血球とCRPという値が高ければ、まず初診の時点で妊婦さんにも投与可能な抗生物質を開始するようにしています。手術を望む方も確かにいますが、手術もそれなりの児へのリスクを伴うのでこの論文の比率ほど、手術に踏み込んでいないです。可能であるなら赤ちゃんに影響を与えず出産し、出産後に次の妊娠も控えていることもあるので、その時虫垂炎にならないように予防的に手術しませんか?といった提案もします。
虫垂炎の治療は医師によって様々ですが、最良な選択は患者さんと話し合って決まっていくものです。