チョコレートが健康に及ぼす効果(心疾患・脳卒中ver)

チョコレートが健康に及ぼす効果(心疾患・脳卒中ver)

もうすぐバレンタインですね。ということで今日はチョコレートに関する話題です。
さて、最近チョコレートの健康への効果がネットで話題になっているようです。 「チョコレートの凄い効果」などといった記事がインターネット上にはたくさん存在しているようで、みなさんも何度か目にしたことがあるのではないでしょうか。

チョコレートって、本当に健康にいいの?

以前はサプリメントの効果についての研究を紹介しましたが、今回はチョコレートと健康についての研究を全部で5つ紹介したいと思います。とくに今回は「心疾患」「脳卒中」などについて検討します。

このようなリスクを調べる研究では、医療界ではリスクの度合いを相対危険度(relative risk, risk ratio, RR)という用語を用いて考えます。これは「危険因子に暴露したグループが罹患するリスク」が「危険因子に暴露していないグループが罹患するリスク」の何倍かを計算したものです。

難しく聞こえますが、「危険因子に曝露したとき、曝露しなかった場合と比較して何倍病気になりやすいか」ということです。

つまり、

相対危険度=1  因子と疾病の間に関連なし
相対危険度>1  因子は疾病のリスクを上げる
相対危険度<1  因子は疾病のリスクを下げる
 

ということになります。

たとえば、喫煙と肺がんの関係について見てみると 男性で喫煙している場合、肺がんに罹患するリスクは

相対危険度:4.5 (3.0-6.8)   (Int J Cancer. 2002 May 10;99(2):245-51.)

と報告されています。 これは、喫煙した場合、喫煙しなかった場合と比較して4.5倍肺がんになりやすいということになります。
ところで、4.5の後ろにある (3.0-6.8)というのはなんでしょうか。 これは95%信頼区間といって、ばらつきの95%の範囲を示しています。相対危険度は4.5と計算されていますが、実際は3.0〜6.8のばらつきがありますよ、ということです。つまり、本当に統計学的に正しいことを言うためには、カッコの中=95%信頼区間も1を超えている、あるいは1未満でなければいけません。

 

 

喫煙の例ではカッコの中(95%信頼区間)も3.9-6.8で1を超えているので、統計学的に有意に、喫煙は肺がんのリスク因子ということができます。

さて話をもどして、今回検証するのはチョコレートです。
ではみていきましょう。

  

 

1つめ

Chocolate consumption and cardiometabolic disorders: systematic review and meta-analysis

BMJ. 2011 Aug 26;343:d4488.

こちらは過去の7つの研究をまとめた論文で、114,009人が解析対象となっています。 心血管疾患、心不全、脳卒中に対するリスクを調べています。

心血管疾患 相対危険度:0.63 (0.44-0.90)
心不全 相対危険度:0.95 (0.61-1.48)
脳卒中 相対危険度:0.71 (0.52-0.99)

ということで相対危険度自体はどれも1を下回っていますが、心不全の場合だけ、カッコの中(95%信頼区間)が1を超えていますね。つまり心不全は統計学的に有意ではありません。

 

2つめ

Chocolate consumption and risk of myocardial infarction: a prospective study and meta-analysis.

Heart. 2016 Jul 1;102(13):1017-22

こちらでは6つの研究がまとめられていて、6851人の虚血性心疾患の方が含まれています。 この研究では

相対危険度:0.90 (0.82-0.97)

ということで、こちらもぎりぎりですが相対危険度が1を下回っていますね。

 

3つめ

Chocolate consumption and risk of stroke: a prospective cohort of men and meta-analysis.

Neurology. 2012 Sep 18;79(12):1223-9.

5つの研究がまとめられています。合計で4,260人の脳卒中の患者が含まれています。 この研究では脳卒中に対する危険度は

相対危険度:0.81 (0.73-0.90)

こちらもなんとか相対危険度は1を下回っています。

 

4つめ

Chocolate Consumption and Risk of Heart Failure: A Meta-Analysis of Prospective Studies.

Nutrients. 2017 Apr 20;9(4). 

こちらでは4つの研究をまとめており、106,109人を対象としており、心不全に対するリスクが計算されています。こちらの報告では、

週に7個未満の摂取
相対危険度:0.86 (0.82-0.91)

週に7個以上の摂取
相対危険度:0.94 (0.80-1.09)

ということで、相対危険度自体はどちらも1を下回っていますが、週に7個以上摂取した場合は、95%信頼区間が1を超えてしまっていますね。7個以上摂取した場合は統計学的に有意ではありません。

 

5つめ

Chocolate Consumption and Risk of Coronary Heart Disease, Stroke, and Diabetes: A Meta-Analysis of Prospective Studies.

Nutrients. 2017 Jul 2;9(7).

14つの研究の総まとめです。解析対象は508,705人です。こちらにおいては

心不全 相対危険度:0.90 (0.82-0.97)
脳卒中 相対危険度:0.82 (0.70-0.96)

ということで、どちらもぎりぎりですが1を下回っています。

 

 

以上! 長かったですが全部で5つの大規模な研究をみていきました。

まとめると

心不全に対する効果は統計学的に示されなかったが、チョコレートを摂取することで心血管疾患や脳卒中のリスクは統計学的に低下する

ということがわかりました。 というわけで、それほど「ニセ科学」というわけではなさそうですね。 ただし、やっぱりカッコの中(95%信頼区間)を見てみると、非常に1に近いですよね。 凄い効果があるとはいえなさそうですし、解析方法を変えたり繰り返したりすると統計学的に有意ではなくなる結果になるかもしれません。また、日本人におけるデータではないので、日本人を対象とした研究が必要ですね。

いかがでしたか? 少し難しい内容もあったと思いますが、今後「ニセ科学」にだまされないためにも、細かいところまでしっかりまとめてみました。

以上、チョコレートが健康に及ぼす効果(心疾患・脳卒中ver)でした!