「早生まれ」と「遅生まれ」の差

「早生まれ」と「遅生まれ」の差

早生まれと遅生まれ、特に4月生まれと3月生まれでは実質ほぼ1年くらいの年齢差がありますよね。 年をとるにつれて1年弱の差は小さくなり、成人の頃にはほぼ差を感じなくなりますが、学童期の頃は体や行動は1年間で大きく成長します。

でも、日本の教育制度上、学校に入学するのは4月と決められており、4月入学の時点では、4月生まれでも3月生まれでも、同じ「1年生」です。成長の程度は異なっているのに。

え、これって早生まれ損じゃない? 


今回はこの「生まれ月問題」が医学・臨床的にもあるのかどうか、検討した論文を紹介します。

今回紹介するのは、学童の生まれ月による差を検証した、ハーバード大学医学部主体で行われた研究です。 アメリカでは学校の始業は9月になるので、日本と少し状況が異なります。つまり、もっとも早く入学するのが8月生まれ、もっとも成長してから入学するのが9月生まれの子どもたちです。

今回論文の著者らは、8月生まれの子供と9月生まれの子供でADHD(注意欠陥/多動性障害)の診断を受ける頻度を解析しました。ADHDとは不注意(集中力が続かない)・多動性(落ち着きがない)・衝動性(順番待ちができない)の症状を特徴とした神経発達症で、近年その疾患の再認識に注目が集まっています。ADHDについてはこちらのサイトで一般向けに非常にわかりやすくまとめられておりますので、興味がある方は一度チェックしてみましょう。

アメリカでは5歳前後で幼稚園に入るの通常ですが、幼稚園入園のタイミングは9月と決まっている州と、9月に限定しない州があります。今回はその影響も考慮して研究が行われました。 2007年から2009年に生まれた40万人以上の小児を対象として、2015年まで追跡してADHDと診断された小児の割合を調べました。すると、8月生まれの小児では10,000人あたり85.1人、9月生まれの小児では10,000人あたり63.6人がADHDと診断されており、8月生まれの方が9月生まれよりもADHDと診断される小児の数が多かったことがわかりました。一方で、他の前後する月(例えば4月と5月など)同士で比較しても差は認められず、また、入園の基準日を9月と限定しない州では差が認められませんでした。ちなみにこれはおまけですが、8月生まれと9月生まれとの間で、喘息、糖尿病、肥満の発生率の統計学的な差は認められませんでした。

つまり、日本に置き換えると、早生まれの小児はADHDと診断されやすいという結論になります。 でも一体どうしてこのような差が認められてしまうのでしょうか。 論文の著者らは考察で、担当の先生や両親が、他の子供と比較することによって、ADHDの診断のきっかけとなることから、実年齢が低いことによる注意力の低下などが比較によって顕在化したことで、診断のきっかけとなったのではないかと述べています。

今回紹介したのはアメリカの研究ですので、教育プログラムも文化も異なる日本ではまた異なる結果になるかもしれません。同様の傾向が日本でも認められるのか、そうだとしたらどのよう解決していくか、今後気になるところですね。

N Engl J Med 2018; 379:2122-2130