ハイリスク妊娠に父親の高齢化も関連する?

ハイリスク妊娠に父親の高齢化も関連する?

母親の高齢出産は高リスク妊娠であり、児への影響もあることはこれまで様々報告されています。一方で、父親が高齢であることが妊婦や児と関連があるのかどうかはあまり検討されてきていませんでした。

そこで大規模な研究にて、父親の加齢と妊婦と児への影響の関係を調べています。母親の年齢や喫煙などは統計学的に補正した上で検討されています。早産であること、低出生体重であること、Apgar Scoreという生まれたときの児の状態を評価するスコアが低いこと、けいれん発作が出現、生後に抗菌薬が必要となるような状態、呼吸を補助してあげなくてはいけない状態、生まれたあとにICU病棟で集中治療が必要な状態 を悪い結果として統計しています。

父親の年齢を25-34歳を基準とし、評価したところ、年齢層が上がるに連れてこれらのリスクは有意に上昇し、特に55歳以上であると、基準年齢の場合と比べると1.24倍、上記のいずれかが起こっているという結果となりました。

妊婦への影響としては、妊娠糖尿病のリスクが父親の加齢に比例して発症率が上昇しており、55歳以上では1.34倍発症リスクが高かったです。また、妊娠高血圧腎症、子癇は加齢の影響は見られませんでした。

これらはアメリカの研究ですが、日本でも晩婚化に伴い、女性だけでなく男性も父親になる年齢が高齢化していることは想定されます。
女性において、卵子の数は生まれたときにすでに規定されており、全量が卵巣内にあります。これらが月経ごとに1つだけ成熟し、排卵されるますので、全卵子が排卵されれば閉経となります。なので卵子の数はおおよそ規定されています。なので高齢になればなるほど卵子の年齢も高齢になるということなので、遺伝子レベルで異常がある卵子が排卵される確率が上がります。ざっくりとした説明ですが、以上のことから高齢妊娠は危険であると言われています。

一方精子に関しては卵子とは異なり男性ホルモンの刺激を受けて作られ続けます。しかし、人間の高齢化はDNAレベルで異常細胞を出現させやすくなるのは間違いありません。これは、DNAにおけるヒストンのメチル化といって、遺伝子異常が起こる一つのミクロレベルの機序も関与します。高齢に伴い精子は作れても異常精子が出現しやすくなることは、今回の結果に関連していると考えられます。

不妊においても、女性因子と男性因子は50%ずつと言われているように、出産においても男性側に少なからず影響を与える因子があることはわかります。


あくまで医学的・科学的には、妊娠・出産は早い年齢でするに越したことはないです。日本の社会背景などもあり晩婚化傾向ですが、やはり臨床現場でも高齢出産による産後トラブルをよく経験しますし、時には致死的なものもあります。出産は幸せなことであるのは間違いないですが、非常に怖いものであることを認識する必要がありますし、それを少しでも安心に、安全に行うためには男性の年齢(男性の精子)の影響もあることが今回わかったということです。でも結局は、女性(母親)が命をかけたことであることに違いはないので、こういった疫学的研究をもっと行い、安全な妊娠が送れたら良いですよね。

BMJ (Clinical research ed.). 2018 Oct 31;363;k4372.