あなたが飲んでいるバイアスピリン, 必要ですか?
- 2019.01.24
- 日常診療の落とし穴

バイアスピリンというと、名前だけでも皆様耳にしたことがあるんではないでしょうか。よく言う、「血液サラサラにするおくすり」の代表格です。医学的には抗血小板薬といって、血小板の作用を抑えることで血が固まりにくくなるというものです。
このバイアスピリンですが、脳梗塞や心筋梗塞、頸動脈狭窄症など、体に血栓ができやすくなっては困るような患者さんには定型的に処方されていることが多いです。しかし、時には、上記のような病気の既往がないけれども、生活習慣病の高リスクの患者さんに対して、予防的に漫然と処方されていることも過去の風習としてあります。
この論文では、高齢者に対するバイアスピリンの予防投与効果を調べるために行われた研究にて、バイアスピリン内服をしている患者は癌死亡率が高かったという結果でした。また、病気にかからない状態での生存率ではバイアスピリンを内服しなかった患者と比較して、差はなかったようです。
この解釈に関しては難しく、なぜバイアスピリン内服にて癌死亡率が上昇するかは私もわかりません。これまではバイアスピリンには発癌抑制効果がある(大腸癌など)とさえ言われてきました。
ただ、バイアスピリンは私のような外科医にとってはしばしば”厄介な薬”と思ってしまいます。手術には出血が付き物で、バイアスピリンのような血液サラサラ系の薬を内服している場合は、休薬期間というのを設けないとなりません。バイアスピリンはこの期間が7日以上必要であったりするのです。手術を組むうえで障害になりえます。もちろん、飲まなければならない患者さんには飲んでもらわないと困りますが、漫然と処方され続けているバイアスピリンを内服させられている患者さんも沢山いるので、自分がなぜ飲む必要があるのかを説明してもらったほうがいいかもしれません。
この論文が真であるならば、癌死に関連もするわけですから。
N Engl J Med 2018; 379:1519-1528
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